4月/卯月 花見:九谷焼と炊き合わせ

4月/卯月 花見:九谷焼と炊き合わせ
彩りから質感まで 繊細な料理の決め手となる器

卯月、花見の季節
風流な「桜川」の染付に春を盛る

日ごとに温かくなり、春めいてきた。冬を抜け、これから様々な花が咲き、色や香りで私たちの心を豊かにしてくれる。

特に4月は、花見の季節。桜前線が次第に日本列島を北上していく。古来、日本人は桜の木には神が宿ると信仰してきた。農耕民族だった祖先たちは、田の神様が降りてきた咲き誇る桜の幹をぐるり囲んで、豊作を願い、酒や食事を持ち寄り宴を催した。それが花見の起源なのだそう。そんな逸話を知らなくても、満開の桜の下で、酒を酌み交わす習慣や、またそうしたいと願う欲求が、現代まで続いていることが、考えてみれば不思議なものだ。多くの日本人の心を捉え、見惚れさせる力を持つ。それが桜。

ゆえに桜は、古代からこの季節の器の世界で欠かせないモチーフとなった。多彩な色使いで、華やかな器はたくさんあるが、今回、高木一雄さんが選んだのは白磁に青で模様を描く「染付」という技法の九谷焼。「本来九谷といいますと、緑や黄色、紫など深くて濃い釉薬を用いた重厚な絵付けが有名です」。高木さんは、九谷焼が好きというよりもむしろ、九谷の窯元のひとつ、須田菁華(すだせいか)の大ファンなのだそう。

これは須田菁華作「染付桜川小鉢」といい、本来は茶の湯で使う道具、水指(みずさし)として作られた器の写し。水指は茶事の席中に釜に補給する水や、茶碗や茶筅(ちゃせん)などをすすぐための水を入れる。中底には桜の模様が描かれて、水を注ぐと水面に桜の花が浮かぶように見える。また外には波の模様。この二つの模様を描いた柄のことを「桜川」と呼ぶ。水面に浮かぶ桜の花の趣を愉しむ。中国の古染付に由来する図柄だ。

料理は、筍、鯛の子に、卵の黄色を載せて花が咲いているように見立てた菜の花。桜の花びらを形取った大根に、本物の菜花も散らし、春の到来を伝える炊き合わせだ。春を食べ終えても器の底には桜の花が現れる。菜の花から桜へ。一つの器の中でも、季節が移ろっていく、粋な仕立てだ。


写真/塩崎 聰 Photographs by Satoshi Shiozaki

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