8月/葉月 月見:京焼と先附

8月/葉月 月見:京焼と先附
彩りから質感まで 繊細な料理の決め手となる器

京焼の蓋を取れば中に名月
夜空を見上げて、月を待つ

「8月って、お盆以外に、これといった行事がないんですよね」と高木一雄さん。ということで今回は、少し気が早いが、季節を先取りしつつ、9月の献立を披露してくれた。

臼を模したくびれのある形。蓋にはうさぎ、そして満月の少し手前の、十三夜の月を描いた京焼である。蓋を開けると中には、キャビアが月に掛かった雲のようにあしらわれた黄金色の黄身。お月見の献立だ。

月ではうさぎが餅つきをしていると、幼い頃に聞いたけれど、それを絵だけでなく、形でも表した遊び心溢れる器である。これは京焼のスタイルを作った野々村仁清(ののむらにんせい)の写しである。17世紀の京都で活躍をした名匠・仁清は、京焼を語る上で欠かせない陶工だ。生年は不詳だが、1646年に仁和寺の門前で開窯したとされる。21世紀の現代に至るまで、多くの作家が彼の作品を写し、それに学び、作品に多大なる影響を与え続けているのだ。「色絵の仁清・ろくろの仁清」とも言われ、秀でた技術による、薄く繊細で、雅やかな作風が特徴。

また仁清から技法を受け継いだ弟子の尾形乾山(おがたけんざん)も京焼の二大巨頭として、覚えておきたい作家の一人。

この二人は師弟関係にありながら、作風の違いが面白い。巧みな陶技を生かして様々な器の形を作り、絵画的で繊細な作を生み出した仁清。一方乾山はダイナミックで独創的なデザインと絵付けが特徴的。「どちらも華やかなんですが、僕の見立てでは綺麗で粋なのが仁清、バランスが取れているのが乾山でしょうか。現代作家も両名の作を写しますが、写しが上手であることも陶工にとっては大切な技術なのです」と、高木さん。そう語りながら仁清写し(左写真/下2点)と乾山写し(左写真/上2点)を、店の器庫から出して、並べて見せてくれた。

話は月見に戻るが、旧暦の9月13日は豆名月、栗名月などと呼ばれ、大勢で集まって月の出るのを待ち、祭る、「月待ち」という行事が行われていた。その時のお供え物が豆や栗であることからそのように呼ばれたのだ。ちなみに旧暦の8月15日は芋名月と言われ、芋を備えた。これが中秋の名月。初秋・晩秋に対して、旧暦8月の満月を中秋節、八月節と呼ぶ。人々は、芋名月と豆名月、両方の月を見て比べ、月を祭ったのだそう。

その頃になれば、少し暑さも和らぎ、夜風も涼やかに感じられる。たまには夜の空を見上げて月を待つ、そんな静かなひと時を持ってみるのもいいかもしれないと、丸い月に模した美しい料理を眺めつつ、思った。


写真/塩崎 聰 Photographs by Satoshi Shiozaki

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