12月/師走 特別編:魯山人と炊き合わせ

12月/師走 特別編:魯山人と炊き合わせ
彩りから質感まで 繊細な料理の決め手となる器

盛ってこそ奥行きの出る器
魯山人作の鉢に郷土料理を

「料理を盛って映える器」という言葉を、当連載で何度もお伝えしてきたが、今回ほどそれを実感したことはない。

「最終回ですから、豪華に北大路魯山人の骨董を取り上げませんか?」という高木一雄さんの提案により、特別編をお届けすることになった。器は『京料理たか木』の顧客のとある方所有の、大変貴重なものをお借りした。

書に始まり、天井絵や襖絵、篆刻にと数々の傑作を残した芸術家の北大路魯山人。美食家としても知られ、大正10年、会員制の「美食倶楽部」なる会を発足。4年後には東京永田町に「星岡茶寮」という料亭を開き、自身が料理長となり会席料理で客人をもてなしていた。

魯山人が作陶を始めたのは、大正4年。当連載で4月に紹介した、石川県の九谷の須田青華窯でのこと。書家として筆を握っていた経験が絵付けのセンスに通じ、芸術家としての巧みな成形の技など、瞬く間にその才能を発揮したと言われている。

九谷焼以外にも、備前、織部、信楽、伊賀、志野など様々な焼物に挑戦し、多くの作を残している。魯山人の器は根強いファンを持ち、収集家や料理人垂涎の器として高値が付くものが多い。

今回の料理は石川県の郷土料理の治部煮(じぶに)。鴨と大根、すだれ麩などを甘辛く炊いたものに、柚子皮の黄色、キヌサヤの青を添えた。器は魯山人による明の写し、豪華な金襴手の大鉢だ。

「料理をする人だからこそ、どんな器であれば料理が映えるのかということを常に考えて作陶していたのだと思います。魯山人の器には何とも言えない存在感があるんです」と高木さんは言う。

実際に空の状態の器と料理を盛り込んだ後とではずい分と器がどっしりとし、奥行きが増したように感じた。治部煮自体決して派手な料理ではないのに、料理と器が一体になったときの存在感は、こちらがぞくっとするほどの凄みを感じた。

魯山人は「器は料理の着物」という言葉を残している。「料理をどんな器に盛るのか?」この連載で一年を掛けてお伝えしてきたテーマだ。器は料理を作る人のもてなしの気持ち。高級なものでなくてもいい、季節や行事を少し意識して取り入れることで、食卓の印象は華やぎ、食べる人が感じる美味しさもぐんと広がるのだ。


写真/塩崎 聰 Photographs by Satoshi Shiozaki

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