3月/弥生 上巳:京焼と焼物

3月/弥生 上巳:京焼と焼物
彩りから質感まで 繊細な料理の決め手となる器

ひな祭り、はまぐりの献立を
ひし餅をイメージした京焼に

三月三日は、五節供のひとつ、上巳(じょうし)の節句だ。現在でも、ひな祭り・桃の節句として女の子の成長を祝う。

ひな祭りの献立といえば、白酒、ひし餅、はまぐりのお吸い物、寿司などが食卓を彩る。今回『京料理たか木』の高木一雄さんは、はまぐりの形に見立てた2種類の料理を披露。

深緑の器には、はまぐりの錦糸寿司を、そして黄色の器にははまぐりしんじょうの白酒焼。「はまぐりは貝の殻が固く閉じていることから、女性の貞操を大切にするという意味と、ふたつとして同じものがないと言われるはまぐりの貝殻のように、ぴったり合う男性との出会い、良縁を願って上巳の節句に食べられたのです」。

今回の器は京焼のなかから、ひし餅をイメージして、交趾菱(こうちひし)を選んだ。交趾とは、ベトナムの北部地域のこと。中国南部で生産された焼物が交趾舟貿易で日本に渡ってくる。それが茶の湯の世界で尊ばれ、主に京都で生産された。黄、紫、緑、青、白など鮮やかな色使いが特徴。「余談ですが、1800年代前半から中期にかけて京焼の技術を学んで兵庫県の淡路島南部でも交趾焼に近い焼物が作られていたんですよ。珉平焼(みんぺいやき)と言います。残念ながら今は窯が残っていないんですけどね」と高木さん。

京焼はひと言では説明が付かないほど、たくさんの種類がある。交趾焼もあくまで京焼のなかの一種である。左の器の集合写真もすべて京焼。そして2月に紹介した楽焼も京焼のなかのひとつである。都であった京都には優れた職人の技術が集まり、またデザインとしてもその時代時代の最先端が描かれ、結果として多種多様な器が生まれ現在まで残ってきた。「店で使う器の6~7割は京焼です。京焼の器は、オールマイティー、料理人からすると料理を盛りつけてとてもぴたっと納まる、映える、優れた器なんです」。この連載では今後もさまざまな京焼の器と料理が登場する。


写真/塩崎 聰 Photographs by Satoshi Shiozaki

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