5月/皐月 端午:粉引皿と八寸

5月/皐月 端午:粉引皿と八寸
彩りから質感まで 繊細な料理の決め手となる器

表情異なる粉引皿に
同じ料理を盛りつけて

新緑の緑がまぶしい五月。快晴の空に、風にのって泳ぐ鯉のぼり。季節はまた進み、次の五節供がやってきた。五月五日は、ご存知、端午の節句。古来この日には、魔よけに、菖蒲とよもぎを家の軒先に飾り、ちまきや柏餅を食べ、鯉のぼりを立て、兜人形を飾る。立身出世、戦や勝負事に勝つ、強い男子に育って欲しいと願う日だ。

今回の献立は四季折々の料理を盛り込む八寸。二月に紹介した初午の八寸と比較しても、器を含め、まったく印象が異なるのがわかる。端午の祝いの献立は、よもぎをあしらった穴子のちまき寿司、サーモンときゅうりの的見立て、海老の兜見立て、矢羽根辛子れんこんなど。これらは戦をイメージする矢や的、兜を料理で表したもの。日本料理の細工の細やかさ、表現の豊かさが感じられる仕立てだ。

器は『京料理たか木』の高木一雄さんが日ごろから親交の深い、現代作家・辻村史郎・辻村塊親子の作品を使った。正方形の器が父・史郎氏の作、細長い器が息子の塊氏の作だ。いずれも粉引(こひき)の皿。白い粉を吹き付けたように美しく見える、ということから粉引と呼ばれるようになった。粉吹(こふき)と表現することもある。成形後白泥釉を掛け、さらに上から透明釉を掛けて仕上げる。「季節を問わないし、自分の料理に応じた表情を見せてくれる使いやすい器です。ご家庭でも毎日使ってもらえると思いますよ」と高木さん。店では他にもとっくりや、大小さまざまな器を所有している。「僕は釉薬が薄がけで、下の土の色目が残っているくらいの粉引が、表情が感じられて好きですね」。モダンな風にも見て取れる器ゆえ、洋の料理にも合いそうだ。

今回は、形が違う双方の粉引皿にあえて同じ料理を盛付け、印象を比較した。『京料理たか木』では日ごろから、家族や友人など、親しい間柄の人との食事の席では、人数分の八寸を大皿に盛り、食卓で取り分けて楽しんでもらう。一人当たりの料理の量が同じでも小分けにするより、ダイナミックな印象となり、何より食卓の会話も弾む。大皿には二人分、もう一方には一人分を。細長い器に八寸を盛る、というのも、斬新で、どちらも面白い。

器自体の形、厚み、存在感の違いを感じながら、自分だったら、どんな料理を盛るだろうか?と想像を巡らせるのも、器と向き合う楽しみのひとつ。そんな風にイマジネーション膨らませる力を持った、味わい深く個性豊かな、辻村親子の粉引、ふた皿。


写真/塩崎 聰 Photographs by Satoshi Shiozaki

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