11月/霜月 紅葉:信楽焼と八寸

11月/霜月 紅葉:信楽焼と八寸
彩りから質感まで 繊細な料理の決め手となる器

色鮮やかな吹き寄せ八寸を
自然の風合い豊かな信楽焼に

手付の皿に色とりどりの料理が盛り込まれている。この連載では三度目の八寸だが、秋は過去2回に比べても一段と彩り鮮やかだ。「寒さが増して景色がさみしくなっていくと、日本料理の献立はだんだん派手になっていくんですよ」と高木一雄さん。器の中には松茸を包んで焼いたカマス、茄子田楽、柿に見立てたサーモンの寿司、牡蠣の紅葉和え、サツマイモに色を付けて仕立てたイチョウや紅葉の葉。色づいた本物のイチョウと紅葉の葉もあしらわれている。これは吹き寄せ八寸といって、風に舞い散る落ち葉をイメージして様々な秋の味覚を盛り込んだもの。目で見て楽しい、食べて美味しい、日本料理の見立ての技が詰まっている。

盛付けた器は信楽焼。タヌキの置物で有名な焼物の里だが、歴史の古い土地で、美しい色合いの器も多数ある。

この滋賀県の信楽と峠を一つ隔てて隣接するのが三重県の伊賀上野。「信楽焼と伊賀焼はよく似た土の質と製法で、素人には見分けが難しいかもしれませんね」と高木さん。伊賀の土の方が白色で肌目が細かく、信楽は灰色の土で粗い、焼き上げの地肌は信楽の方が赤茶色が濃いなど、微妙な違いがある。

京都での修業時代、たまたま通りかかった器屋で、初めて買った器が信楽のお猪口だった。「作家の杉本貞光さんの器の説明を聞き、魅せられたんです。これが僕の器収集の始まりなんですよ」と高木さん。今も大切に使っている、写真の小さなお猪口を見せてくれた。

信楽の魅力は自然な風合い。中でも古典的な焼き方を守る作家は、窯に入れて七日間火を入れて、その後七日間冷ます。時間と労力が必要。自然釉を使い、どんな模様に焼き上がるか分からないところがまた面白いという。平皿のように透き通ったビードロ状の美しい表情をしたものもあれば、とっくりのように赤褐色の土色の物もある。「どんな料理を盛り付けても受け止め、季節も選ばない器です」。今回のような鮮やかな料理を多種様々盛り込んでも、統一感がある。平皿などは洋のおかずを盛っても映えるし、食卓で長く使い継げる器である。


写真/塩崎 聰 Photographs by Satoshi Shiozaki

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